プロクラウドワーカーがDeNA問題を語る。キュレーションは本当に悪なのか
2016年、メディアに関わる人が直面した最も大きな出来事といえば、DeNA事件。
今まで言いたいことは山ほどあったのだけど、言わなかったプロクラウドワーカーの私の最近の気持ちを綴ってみます。
別に誰に向けたわけでもなく、私の頭の整理のような、懺悔のようなものです
どうも、プロクラウドワーカーのしおりんです。
プロクラウドワーカーとは、昨今のDeNA問題でよく耳にするようになった方も多いと思いますが、クラウドワークスというクラウドソーシングサービスで、一定の基準をクリアした人にのみ与えられる肩書きです。
基準はいくつかありますが、その中の一つに獲得報酬額月間200位以内というものがあります。
クラウドークスの会員数は100万人を超えているので、単純計算で上位0.02%の人にのみ与えられる称号ということですね。(改めて調べてびっくり。)
そんな私が、今回のDeNA問題について思ったことを、今更ですが赤裸々に綴ります。
最初に言っておきますが、私は文章、画像のパクリは良くないと思っています。
それを前提に読んでいただければと思います。
キュレーションサイトは本当に悪なのか?
騒動の中心となったのは、DeNAが運営しているキュレーションサイトに関して。
様々なメディアやブログでキュレーションメディアについては嫌という程書かれているので割愛。
さて、プロクラウドワーカーの私がキュレーションサイトの記事を書いたことがあるかと言われれば、もちろんyesです。
というより、クラウドワークスのライター部門でプロ認定されている人間のほとんどは、キュレーションで記事を書いていると見てほぼ間違いないと思います。
それは後述しますが、キュレーションサイトで記事を書くことは、ある種の人間にとってはかなり儲かることだからです。
では、キュレーションサイトは本当に悪なのか。
これは、何を基準にするかで大きく変わると思います。
パクリや著作権侵害
まず、キュレーションサイトで記事を書くにあたって、ワーカーは何をしているのでしょうか。
まず、キーワード(サイトによってはタイトルや記事の方向性、組み立て方)が渡されるので、マニュアルに従って記事を作成していきます。
この時、特に指定がなければ、キーワードで検索をかけたり、ある程度自分で文章の組み立てを練ってから検索をして、その記事に対して知識を深めます。
私のやり方は、ここで作成する記事に関する情報を全てインプットし、しっかり理解してからアウトプットするという方法でした。
しかし、この作業で問題になるのがコピペです。
コピペはグーグルにはすぐにバレるので、コピペが多い記事は悪質コンテンツとみなされて検索順位が上がりません。
私のように一度インプットしてから書いているのであれば自分なりの言葉に置き換わりますが、そうでないと、コピペした文をうまく入れ替えたり、言い換えたりする、いわばリライトの状態になってしまうわけです。
この分量が多くなればなるほど、パクリと言われても仕方のない記事になってしまうでしょう。
さらに悪質なのは、検索1位の記事を完全にコピペしてリライトする方法です。
これは文章の構成も丸パクリになってしまうので、コピペツールに引っかからなかったとしても倫理的にNGです。
このように、文章に関しては、書く人間によってセーフ、アウトがかなり分かれるように思えます。
ただし、画像の場合は誰が行ってもアウトです。
多くのキュレーションサイトでは、引用してきていいサイトリストのようなものがあります。
これは、以前は著作権的に大丈夫だからなのだろうと思っていたのですが、フリー画像サイト以外に、著作権が完全フリーとみなされたコンテンツはほぼないですよね。
つまり、キュレーションサイトの運営側が画像引用可と勝手にリストアップしているサイトは、勝手に使っても訴訟のリスクがほぼないと考えられるサイトということなのだと思います。
例えばよくマニュアルにあるのが、「商品やお店の画像は公式サイトからのみ」というもの。
確かに、商品やお店に関わる人にとっては、ただで宣伝してもらったのだから、サイト側が訴訟を起こされることは限りなくゼロに近いと思います。
しかし、公式サイトだってお金をかけて作っているものだし、写真撮影に外部のプロを使っていれば、金銭が発生しているのです。
カメラマンは、そのサイトに掲載するための写真を撮り、そのサイトにしか載らない前提の金額を受け取っているはずなので、それが別のサイトから世の中に出回ってしまっては、おかしなことになってしまいます。
もちろん、イメージ画像を提供してくれるサイトにお金を払って使っているメディアもありますが、グルメ、美容(商品紹介)などは、イメージ画像では意味がないことがほとんどなので、リスクの少ないサイトから取ってきてくださいと指示をすることになります。
これは、ダメですよね。
キュレーションサイトの乱立
キュレーションサイトが増えたことでクソ記事が量産され、検索上位にはキュレーションサイトばかり!というユーザーの怒りの声もよくきかれます。
ではなぜ検索上位にキュレーションサイトが多数載ってしまうのか。
これには、そもそも1サイトの記事数が多いこと、キュレーションサイト自体が増えたことの2つの理由があります。
例えば、「新宿、肉」なんて検索したら、同じサイトの違う記事が10位以内にいくつもあるなんてことも出てくるわけです。(実際やってないからわからないけど、理屈としてはこういう現象が多いです。)
どうしてこうなってしまうのかというと、各キュレーションサイトには、このキーワードで上位を目指したいというキーワードが平均して3000ほどあるのです。(ジャンルによっては無限にある場合もありますが、目安は3000〜 5000でしょう。)
例えば上の例でいくと、3000キーワードの中には「新宿 肉料理」「新宿 焼肉」「新宿 肉 デート」みたいな類似キーワードもいくつもあるわけです。
ではどうして3000なのかというと、これにはドメインの強さも関係しています。
例えばあるキーワードで検索して1位の記事、これと全く同じ記事が、この記事しかないサイトにあっても多分1位にはならないでしょう。
検索上位に来るには、記事の質だけでなく、そのサイトが良質あることも大事です。
そのためには、一定の記事数が必要となり、3000記事あれば安心という意見が多いようです。
もう一つの理由の、キュレーションサイト自体の数の増加。
今日本には数え切れないほどのキュレーションサイトが乱立しています。
グルメにはこれ、美容ならこれ、と、1ジャンルに1サイトならきっとキュレーションサイトはとても便利なものなんです。
しかし、ここまで乱立してしまっては、ユーザーを混乱させたり、キュレーションサイトは見たくないという人にとっては邪魔にしかなりません。
これらの観点から見ると、キュレーションサイトの存在は、あまりいいものには思えませんね。
ユーザー目線
では、実際に使うユーザーにとって、キュレーションメディアはどうなのか。
DeNA問題の発端である医療キュレーションサイトWelqには、医療従事者には考えられないような間違った情報が載っていたそうです。
これはWelqが他の間違ったサイトを参考にしたからであって、そもそもネット上には間違った医療情報が無数に転がっていたので、何もWelqだけが悪いわけではないように思えます。(それをパクって炎上したのだから自業自得というのももちろん頷ける意見ですが。)
しかしそれ以外にも、「肩こりは幽霊の仕業」といった、どう考えてもユーザーが求めていない内容が記事内に書かれていたことも、炎上の原因となりました。
どうしてこうなってしまったのかというと、これは多分文字数稼ぎと他のサイトとの差別化だと思います。
医療情報だと、どうしても1つのキーワードに対して書くべき内容の上限は決まっています。
肩こりの原因を書けと言われたら、正しい情報なら、その原因の数はほぼ一定ですよね。
しかし、それだと他のサイトとなんら変わらなくなってしまい、上位表示が難しくなります。
そのため、他のサイトにはない情報を無理やり入れ込むために、そのような意味のない内容が入れられたのだろうと思います。
さらには、記事の質には文字数も関係があるのですが、Welqが上位表示されはじめた頃、googleは長文コンテンツをかなり重要視している節がありました。
そのため、文字数を稼ぐために、不必要な情報がプラスされたということが考えられます。
以上のことを踏まえると、Welqはユーザーにとっては不利益な記事を含むサイトであったことは明確です。
しかし、良質なキュレーションサイトも世の中にはたくさんあります。
例えば、グルメだと、ぐるなびや食べログがありますが、それらは検索の仕方に限界がありますよね。
エリア別、価格帯別、ジャンル別、シーン別、せいぜいそんなものでしょうか。
しかし、キュレーションサイトはかなり細かいところまで突っ込んでいて、ツリーハウスで食事が食べられるスポットだったり、マクロビ専門店、スムージー専門店など、ユーザーが本当に行きたいと思っている飲食店がまとまった記事がかなり多くなっています。
それらの作られ方や、画像引用元のことはさておき、これらの記事の執筆者は、ネット上からいちいち、「都内 ツリーハウス」なんて調べては、お店の特徴や詳細情報を細かく書き出し、一つの記事にしていったわけです。
これは、ユーザーにとってはかなり便利なコンテンツと言えると思います。
実際に私も、飲食店を探すときはかなりキュレーションサイト頼みです。
以上のことから、ユーザー目線でキュレーションサイトの是非を判断するのは難しいように思います。
ただ、今回のことでキュレーションサイトに疑問を覚えた方、ネット上の情報の信ぴょう性に疑問を持った方も多数いると思います。
テレビでさえ捏造される時代です。
どんな情報が正しいのかは、自分で検証する癖をつけるのが賢明だと思います。
書かれる側の負担
キュレーションサイトが複数できたことによって、お店によっては数十のメディアに自分の店が宣伝されている、なんて事態もあり得るのではないでしょうか。
もし、キュレーションサイト全てが店側に取材に行っていたとしたら、これは結構迷惑なことなのではないでしょうか。
何度インタビューに来られても、店側が話すことはほとんど変わりませんよね。
サイトによっては、マニュアルに、紹介する店に電話取材等をするのは控えてくださいという記述があるものさえあるんです。
もし私がお店の人間なら、サイトに書いてある内容が正しいのなら、取材に来てくれないほうがありがたいですけどね。
ふと思ったのだけれど、そういう、取材したい人向けの情報プラットフォームを作るのはどうだろう。
お店や商品を登録して、取材したい人はそのプラットフォームにお金を払えば、様々な情報や画像が網羅されている、みたいなそんなやつ。
お店の人は1度そこに情報を登録してしまえば、もう取材に時間を割く心配はありません!みたいな。
誰か作って。
以上のことから、私自身はキュレーションサイトに対していいとも悪いとも言えません。
が、クソみたいな文章や、日本語が間違っているものに対しては、書いてる奴は何を考えているんだ、金もらってんだろ、とは思いますけどね。
内容云々よりそっちの方が気になります。
そんな仕事してライター名乗ってるとかクソムカつく的な。
キュレーションサイトを運営している人間は楽をしている悪人なのか
いうまでもありませんが、キュレーションサイトは儲かります。
さらに、儲かったサイトは買収されます。
そのため、優秀な大学生はスタートアップとしてメディア事業に参入することが非常に多くなっているのです。
アクセスが伸びて儲かればそれだけでウハウハ、さらに買収されれば、一度に億単位のお金が転がり込んで来ることもあるのです。
しかし、パクリメディアなんて言われてはいますが、中では大変な苦労が強いられていて、数人で数千記事の公開を短期間に行うため、労働時間は半端ではありません。
人の書いた記事をコピペして、画像盗用して、ポチッと更新して何千万、なんて世間では言われているかもしれませんが、実際には、本気でこのメディアを成功させようと思っているいわば確信犯的な人間が努力に努力を重ねているわけです。
ただ、それは、優秀なキュレーションメディア(今世の中で言われている意味の)を作るには正しいことですが、倫理的に間違っているところがたくさんありますよね。
ただし、DeNA問題が騒がれるまで、キュレーションメディア業界は、これが正しいこととして常識になっていたのです。
パクリとパクリでないの線引きはどこにあるのか?
キュレーションメディアはパクリサイトと言われていますが、それは、構成?文章?画像?
画像パクリはもういうまでもありませんね。
著作権が誰かの元にある状態の画像を勝手に使ってはいけません。
構成?
これはちょっと難しい部分があるのではないかという気もします。
同じキーワードで記事を書くとしたら、読みやすいと思える構成はほぼ一緒になってしまうんではないかと思うんですよね。
まあ、これはパクったのか、パクってないのに同じになってしまったかは、問うても仕方のない問題のような気がするので、今後書き手になる方は、堂々と自分が書きましたと言える行動を心がけましょうとしか言えないですね。
文章。
これが一番気になっていることなのですが、パクリってどこからがパクリなんでしょうね。
例えば私はキュレーションサイトで記事を書くときは、ある程度色々なサイトで情報を集めてインプットしてから自分の言葉でアウトプットするわけですが、これもパクリと言われてしまうのでしょうか。
さらに、自分の主観や体験談は書かないようにとマニュアルに明記されいるキュレーションサイトも多いです。
つまり、キュレーションサイトには事実しか書けないようになっていることがほとんどなのです。
こうなると、事実にパクリも何もないので、キュレーションサイトはパクリサイトとは一概に言えないような気もしてくるのです。
もちろん特徴的な表現を真似るのは良くないですが。
また、キュレーションサイトは、人のサイトの文言をコピペして貼り付けているだけと思っている人もいるかもしれませんが、それはほぼあり得ません。(たまにそういうサイトもあるようですが、DeNAと同じような運営方法をとっているキュレーションサイトではあり得ないはずです。)
なぜなら、コピーコンテンツは悪質とみなされ、ほぼ検索に上がることがないので、記事を作る意味がないのです。
そのため、コピペチェックは厳密にしているというメディアが多いです。
試しにクラウドソーシングに登録して、全コピペしている記事を納品してみてください。
多分突き返されて、そのメディアからの仕事はほぼもらえなくなるはずです。(やったことないので、誰かにやってみて欲しい気持ちがちょっとある…これをやれば、コピペチェックをやっているところ、やっていないところがわかるはず。)
以上のことから、キュレーションサイトはパクリサイトと言えなくはないのかもしれないけど、「パクリサイト」という言葉だけが一人歩きして、どんどん悪い印象がうえつけられて、きちんとしているキュレーションサイトまで悪く思われるのは嫌だなあとか思っています。
一円ライターは本当に安いのか?
世の中では、DeNAのキュレーションに関わったライターが1記事1円にも満たない値段で記事を書いていたことが大きな問題になりました。
これに関してDeNAは会見で、自分の興味がある分野の記事を趣味の範囲で書いてもらうことを想定していたので問題ないと回答していました。
もちろんクラウドソーシングで発注をしているので、職業としてウェブライターをしている人間に書いてもらっている認識はあったと思うのですが、これは特に問題ないかと思います。
そもそもクラウドソーシングでは、自分のしたい仕事に応募して仕事をもらうというのが普通なので、やりたくなければやらなければいいのです。
そして、キュレーションサイトの記事は、高いものだと文字単価5円くらいまであります。
私がプロクラウドワーカーなのでそういった案件のスカウトが大量にくるのかもしれないのですが、プロでなくても、2円くらいならきちんと調べれば見つかるはずです。
さらに、知識がある分野の執筆なら、2000文字を1時間足らずで書ける人はざらにいます。
ちなみにこのブログは既に6000文字を超えていますが、30分かかっていません。
こうなると、自分の努力や日々の知識の積み重ねで、時給は5000円にも1万円にも上げることができるのです。
これをクラウドソーシングに登録して2ヶ月ほどでやった私としては、キュレーションサイトに関わっていて、1記事1円未満は安いだとか、今まで書いてきたくせにDeNAが問題になってから、あいつら酷い!みたいに言っている人は滑稽だと思うし、単に努力不足なのでは?としか思えません。
DeNAがどうだったかは知りませんが、きちんとこなしていれば、単価交渉に応じてくれるサイトもたくさんあります。
クラウドソーシングで責任を持って仕事をするからには、プロ意識を持った方がいいと思います。
そんな感じかな。
まあ、世の中でクソ記事と言われる検索汚しの記事を量産した経験がある私としては、それは申し訳なかったなと非常に複雑な気持ちだし、懺悔したいと日々思っています。
ただ、キュレーションサイトを作っているサイトに全責任がある、制裁を!と思っている人がいるなら、そんな方に朗報。
私はもともと収入の大部分をキュレーションサイトの記事を書いたことによるものに依存していましたが、そこでノウハウを学べば、SEOもお金をもらいながら勉強できるし、それによってさらに幅広い分野のお仕事を様々な会社から直接もらえるようになりました。
そうやってキュレーションサイトを踏み台にした人間も、ごく一部ではありますがいることにはいるので。
以上、2016年の懺悔でした!