しおりんのりんりん日和

100万回だって生きたい女の子の毎日…

虚像に恋をするということ。振られなければ始まらなかったかもしれない不思議な恋のお話

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後から考えてみると、自分はあの人のことが好きだったのだろうか、と違和感を感じることってありませんか?

あなたの好きな人は、本当に、生身の、あの人でしょうか?

虚像に恋をしてない?

 

 

このお話は以下の記事の続きです。

 

shiorin-biyori.hatenadiary.jp

 

自分が好きときちんと気づく前に終わってしまった、恋にもならなかった恋。

もしかしたら私は、一方的に終わりを告げられることで、後から、あの時間は恋だったのだと認識させられてしまったのかもしれない。

だとしたら本当に、何も生まれていないし、何も失ってはいないのだ。

 

確かによくよく考えてみると、私はいつ彼のことを好きになったんだろうという疑問が浮かぶ。

 

一度好きと言って、彼も好きと返してくれたけど、それはいつものちょっとした悪戯のつもりで、本心からじゃなかった。

むしろ彼と別れたあと、私はそこまで彼を好きではないのに、彼とのことを真剣に考えなくてはいけないことに少しの戸惑いを感じていたくらいだ。

それなのに、彼に終わりを告げられたその日の夜、その時には彼のことがどうしようもなく好きになっていた気がする。

 

よく考えてみると、私は、会わない時間に勝手に相手の魅力を想像したり、相手がくれたいくつかの言葉の真意を考えて、一人でああでもないこうでもないと考えているうちに、相手ではなく、自分の中に勝手に作り上げた虚像に恋をしてしまっていることが多いように思える。

彼の場合は、私に都合のいい虚像を作らせる材料が、私の身近にありすぎたことが、より彼を好きになってしまった(ような気がしている)原因なのだと思う。

 

まずは本。

彼は決して小説家ではない。

小説家であれば、彼が書いた本に恋することはある程度想像しやすいことかもしれないけど。

それでも私は彼が書いた本を読むと、そこに並べられている難しい言葉の隙間から、彼の考えていることや、普段生活している世界のことを勝手に想像して、彼のことがわかってしまったような気になるんだ。

 

そしてテレビ。

彼が過去に出演した番組を繰り返し見る。

私の記憶の中の彼の表情や仕草や声は、いつの間にか、会ったこともないテレビの中の過去の彼にすり替わっている。

その証拠に、今、私が実際に接していた彼の表情や声を思い出そうとしても、全く思い出せないのです。

彼が写っている最近の写真や、テレビの中の彼の顔ははっきり思い出せるのに。

 

そして、ブログ。

多分これが一番大きいのだと思うけど、彼は、私が知っている中では最も長い期間ブログを続けている人間。

その全てを読み返しているうちに、また私は彼の全てをわかったような気になって、ブログの中の彼にまた恋をしたような錯覚を覚えて…。

 

彼は、すべての思想をブログの中に書き残しているような、そんな人です。

遠距離恋愛中の彼女への想いや、大好きな彼女への未練、いつか付き合っていた頃の強烈な思い出を、それはそれは美しすぎるくらいの言葉でこの世界に生み出してしまう人です。

 

私の知っている彼は、ご飯を食べながら私を分析し、けなして試していた最高に性格の悪い嫌な男であり、

私に気を許してなんでも話してくれた友達のような彼であり、

一緒にプレゼントを選んでくれた無邪気な彼であり、

私を口説きたいけど躊躇してしまうんだと言った臆病な彼であり、

僕は20年でも30年でも君と一緒にいたいけど、君の興味はきっとすぐに他に移ってしまうんだろうねとさみしそうに言った彼であり、

とびきりの笑顔で私の頭を撫でてくれた優しい彼であり、

都会の寒空の下で、私の手を握ってそっとポケットに入れてくれた彼であり、

ホテルでは偽名を使ってチェックインをする彼であり、

ハーゲンダッツを食べる私を見て、買ってよかったと優しく笑う彼であり、

私の横で眠るいびきのうるさい彼であり、

朝にはおはよう、行ってきますとキスを交わした彼なのに。

 

それなのに私が今思い描くことができる彼は、そんな彼とは別人の、

本の中で講釈を垂れる彼であり、

テレビで小難しい話をする彼であり、

ブログの中で日々感じたことを自由に無邪気に綴る彼であり、

大切な女性を心から愛するブログの中の彼なんだ。

 

彼はブログの中で、炭酸水が、それも、ゲロルシュタイナーが好きだと言った。

ふと冷蔵庫を見ると、私の部屋の冷蔵庫にもゲロルシュタイナーが入っていた。

 

彼は、

炭酸が抜けるように、僕たちの気持ちも消えてしまうのだろうか

といつか書いていたけど、

私は、早くこの炭酸が抜けて、あなたのことが忘れられればいいなと思っています。

 

最悪なことに、私は炭酸水が嫌いなんだけど。

飲みきってしまえばすぐに忘れられるかもしないのにね。

 

だから毎日一口ずつ飲んで、徐々に炭酸が抜けていくのを待っているしかないのです。

 

こんな風に、私は本人よりもずっと虚像に恋をしてしまう人間です。

いつかまた会った時に、この人誰って思ってしまうかもしれないくらいに。

 

でもきっと私が彼の虚像を勝手に作り出して、勝手に恋に落ちた数時間の間に、

彼も彼で勝手に未来の私を作り出し、

未来の私はきっと彼に興味のかけらもない自由な女に戻っていたのでしょう。

それはお互いにもったいないことだったのかもしれないし、それが最善だったのかもしれないし、今となってはよくわからない。

 

とはいえ、人間この先どうなるのかなんて誰にもわからないし、彼とはまた会うことになるだろう。

私は、「その時がきたら、運命だと思って、少しだけ私のことを心に置いてね」

といったけど、そうしてくれるだろうか。

 

その時に、また笑って友達に戻れるのか、やっぱり好きだと思うのか、やっぱり大嫌いだと思うのか、どっちなのかはわからないけど、

 

私を少しだけ成長させてくれたことにはお礼を言います。

ありがとう。